講評

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論題

BMサマースラム2004 -守- ディベートナイトタイトルマッチ 奥山真 初防衛戦
「日本政府はイラクから、自衛隊を撤退すべし」

講評:中西夏雄

肯定側:奥山真
否定側:高澤拓志 
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数13名
肯定側 57.25P(9票) 否定側 52.73P(4票)

漢(おとこ)祭りを勝ち抜き、ディベートナイト初載冠となった奥山真。対する高澤拓志は、BM2003大ブレイクするも、2004においては、まだその輝きを見せていない。

本来ならば、チャレンジャー権を得るにも、数ヶ月を要するマッチメイクだが、そこはBM。映画「ロッキー」(1976)を彷彿させるリングが用意された。
アポロ・グリードこと奥山真に対し、高澤拓志は、ロッキー・バルボアになることができるか!?

▼肯定側立論▼
まずはアポロ奥山が、「非軍事的人的貢献」基本ステップに、そして①国民の安全保証②国際的評価のアップという国益のために、小気味よく自衛隊派遣にジャブを打ち込みはじめた。すなわち、自衛隊派遣には、
①法的根拠なし
②軍隊派遣は治安悪化を生む
③軍事的参加=中立性なし

さらに、国益実現のための戦略プランはこうだ。
①自衛隊の即時撤退
②非軍事的人的貢献 ※外務省を通じて、CPAが権限委譲する7/1以降に

これによってメリットは①危険減少②日本国民の安全・中立性の保持
いつもながら、磐石の立ち上がりを見せるアポロ奥山。

▼否定側尋問▼
これに対し、ロッキー高澤も次のラウンドにつなげるべく、尋問という攻撃をするも、有効打が出てこない。唯一は「撤退で日米関係は悪化するか」→YESを引き出せたことか。
人的貢献の必要有無の尋問もあったが、肯定側立論でもともと認めているため、全くの空振り。

▼否定側立論▼
ロッキー高澤の守るべきものは、「米国との関係維持」。日米関係の維持こそ、日本の国益だと表現する。やはりロッキー、アメリカ第一、はずすことはできない。肯定側プランによるデメリットは、日本の国益(安全性・プレゼンス)低下だ。
しかし、デメリットの発生過程が見えるパンチが打てていない。人的貢献が必要だ、自衛隊の代替団体では治安にならない等ではヒットしない。唯一は、これまでの米国との協調路線、石油資源の供給源として重要な中東の和平こそ、日本、世界のためになる、と。
ただ、これでは基本ステップワークである日本の国益とリンクしてこず、自らのとったスタイルが早くも崩れてきている。
また最大のミス、アポロ奥山のメリットへの攻撃が全くみられない。やはり、大舞台に飲み込まれてしまうのか、ロッキー高澤!?

▼肯定側尋問▼
ロッキー高澤の出方を分析したアポロ奥山、一気にそのミスをついてゆく。唯一、否定側のいいパンチであった①日米関係悪化②石油資源としての問題にどれぐらい関係が悪化するのか、イラクからの輸入量は?などと厳しく追及。
ロッキーはクリンチすらできず、防戦一方。しまいには、肯定側の「米国なのか世界なのか」という尋問に、「アメリカは世界です!」のお答え。この一言は効いた。対戦相手、アポロ奥山ではなく、観衆いや聴衆に。苦笑が漏れる。聴衆の心を掴んだのか、突き放したのか。しかしこのアメリカ礼賛こそ、「ロッキー」の真髄だ。

▼否定側反駁▼
尋問というパンチにサンドバック状態だったロッキー高澤。しかし、立て直すにも立ち上がりの立論が弱い。しかし、ロッキー高澤は立論を打たれつづけるも、愚直にノーガードでアポロ奥山の前へ。私は、そんな高澤が好きだ。もちろん、米国一番のロッキー高澤、日米関係強化、維持の繰り返しのみ。逆転の糸口見えず。

▼肯定側反駁▼
尋問で容赦なく否定側を叩いたアポロ奥山は、自らの基本ステップワーク「非軍事的人的貢献」に忠実に、しかも戦略プラン②によって、人的貢献が重要とする否定側の論にも、きっちり返してゆく。そして、ロッキー唯一の武器、日米関係悪化、石油資源としての問題にも、それぞれ、スペインと米国、仏・露と米国との関係が悪化していないこと、またイラクからの原油輸入が0.9%しかないと、ここぞとばかりの渾身のストレートを打ち込み、ロッキー高澤を沈めにかかる。果たして、否定側の最終ラウンドは…。

▼否定側最終弁論▼
手立てのなくなった挑戦者は、次の一発に全身全霊を賭ける。それは、肯定側の人的貢献は、安全が保証されるのかと問う。つまり、肯定側の定義する国益と矛盾するのではないか…。
しかし惜しい、実に惜しい。なぜその捨て身のクロスカウンターをもっと早く出せなかったのか。まさに問で終わってしまっている。突く場所は間違っていない。保証されないということを証明して、矛盾を追求すべきであった。しかし、この一発にかけたロッキー高澤に、もう反撃の力は残っていなかった。

▼肯定側最終弁論▼
勝利を確信したのか、最終弁論にいつものキレがない。否定側の小さな反撃に付き合い、自らの美しいステップをまとめあげるには至らなかった。いや、もしかすると、最後まで食らいついてきた高澤のクロスカウンターがかなり効いていたのかもしれない…。

▼判定と総括▼
肯定側の国益に対する現状の問題と、それを打破する明確なプランとメリットに対し、否定側は唯一の反撃であった、自衛隊撤退=日米関係悪化を立証するには至らなかったため、肯定側の圧勝と判定された。しかし、肯定側の人的支援についても、安全保障面では疑問符がつき、スパイクとしては起爆装置を積んでいるとも感じられ、攻撃対象にならなかったことがラッキーだったように感じられた。

しかし、前文で「ロッキー」を彷彿させると書いたが、重要な事実を忘れていた。映画で、ロッキーはアポロの前に敗れたのだった。ということは、映画のシナリオと同じだったのか。いや、映画とは異なる点があった。それは、映画では、アポロに勝者の姿は見えず、敗者ロッキーの方が観衆の心を掴み、輝いていた。ロッキーは試合に負けたが、勝負には勝ったのだ。何者でもなかった自分が、エイドリアンとの出会いを初めとして、何者かになろうともがき、何者かになるという自分との戦いに。 しかし、現実はアポロが圧倒的に試合を制し、観衆の心も掴み、ナイトでもあった。おっと最も大きな違いを見落とすところだった。ロッキー高澤にはエイドリアン がいなかったのだ。
ロッキー高澤の名を叫び、求め、抱擁し、熱くキスするエイドリアンの姿が。
妙な声で、「ハ~イ!○○ちゃんっ!」などと叫んでいる場合ではない。

アポロ奥山は、ロッキー高澤は本試合評のみの設定であり、実際は、ナイト奥山真、ロッキー高澤は、そのままの高澤拓志ですのでご注意を。

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