講評

講評

論題

BMディベートグランプリ2004 予選リーグ~決勝トーナメント EXTRA MATCH
「論題:日本政府は、遺伝子組み換え作物・食品(GMO)の生産・販売・輸出入を全面禁止すべし」

講評:本間賢一

肯定側:ディベーターB
否定側:中村貴裕
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数10名
肯定側 40.8P(0票) 否定側 55.18P(10票)

■<概   略>
久々にBMに復帰した中村(貴)と、前回BM登竜門で、2連勝と鮮烈なデビューを果たしたディベーターBの対戦となった。
肯定側は、メリットを「食の安全の確保」の1点に絞り、その1点の立証に全てをかけた。一方、否定側は、肯定側の証拠資料の古さなどから反論を行い、生産者、消費者、両方の立場から、GMOが有用なものであることを訴えた。

■<肯定側立論>
◇哲学、理念
 『国民の健康を保つため、GMOを全面禁止すべし』

◇プラン1点
 ┗①GMOの全面禁止

◇メリット1点
 ┗①日本の国際的プレゼンスUP

◇GMOが危険だという現状分析3点
 ┣①遺伝子組み換え技術が未完成
 ┣②安全性の検査に不備がある
 ┗③安全の基準に問題

この立論では、「GMOは100%安全とはいえない」ことは、言えている。
ただし、デイベートの主張は、価値×量×確率 から、そのメリットの大きさが決定されるが、ここでは、「若干の確率がある」ことを言えただけで、価値(例えば、それによって人が死ぬ可能性がある)及び量(何人くらいに影響する)に言及できておらず、立証責任を負ったとはみなされなかった。

■<否定側尋問>
 ここでは、大きく分けて2点の確認が後の反論の足がかりになった。
 ①GMOを他の品種改良種などと比べ、安全性に明確な違いがないこと
 ②検査方法などについて肯定側が引用した資料が1999年時点の物であること。

■<否定側立論>
◇哲学、理念
 『GMOによる効率化及び豊かな食の確保』

◇デメリット2点
 ┣①生産者がGMO技術を利用できない
 ┗②消費者がGMOによる有用な食を確保できない

肯定側への反論としては、3点。
①自然交配種とGMOを比較した場合、GMOの方がより厳密な検査を行っている。
②GMOが過去問題を起こしたことがないという資料の提示
③肯定側が提示した資料が、日本がGMOの審査基準を変えた後であること。
見事にQ&Aが反駁の足がかりになっており、Q&Aを有効に使った見事な試合運びだった。
また、デメリットも2点ともインパクトが示されており、この時点では立証され、肯定側からの反証待ちという内容であった。

■<肯定側尋問>
疑わしいことを追求し、また事実を認めさせるという、キャリア2戦と思えない、ディベートの王道を行く尋問だった。成果としては、「GMOは安全だとは言い切れない」と認めさせ、「GMOより品種改良種がより危険」という内容を追求した。

■<否定第一反駁~肯定第一反駁>
否定側は、従来の品種改良種は危険だということ、GMOの検査基準が変わった結果加わった、長期にわたる 実験の内容などを印象し、安全性に問題がないという論を補強する。
肯定側もわかりやすい構成で、反論は加えていく。 ただし、「品種改良は植物同士の交配なので少しづつ変化するため、人体も対応できる」など、通りそうではあるのだが、やはり証拠が必要なところに証拠がないため、ポイントには結びつかない部分があった。

■<否定最終弁論~肯定最終弁論>
否定側は、反駁までの戦いで勝利を確認したのか、特に新しいポイントは提示せず、今までの論を総括する形となった。
肯定側も、いままでの論では、負けている事を悟り、「生産者も食事は取るので消費者である」などと、視点を変えようとするが、ポイントを取ることはできず、試合が終了した。

■<判定と総括>
ブランクを感じさせない試合運びで、中村貴裕が勝利した。
中村は、BMディベートグランプリに出ても十分勝機があったと思えるほどの見事な論を展開した。
一方、ディベーターBはBM登龍門の時の勢いも自信も感じることはできなかった。おそらく準備不足が原因と思われるが、構成のわかりやすさなど、とても2戦目とは思えないものがある。
2人とも、今後の戦いが楽しみである。

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