講評

講評

論題

BMファイナルカウントディベート2005  Main Burning 
「日本は、米国産牛肉の輸入を再開すべし。是か非か?」

講評:中西夏雄

肯定側:久保田浩
否定側:奥山 真
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数 12名
肯定側 3票(64.21P) 否定側 9票(67.41P)

■<概  略>
生きていく上で欠かせない食の安全は、誰がどこまで担うべきなのか?
情報を元に国民が判断、選択し、責任を負うべきとする肯定側に対し、情報量、判断力とも圧倒的である政府側が食の安全を担うべきとする否定側が、BSE問題を軸にお互いの主張を展開していった。

■<肯定側立論>
◇哲学:食において、国が国民の安全を保障し切れない以上、国民に選択権を与えるべき
◇定義:安全とは、口に入れるリスク
◇プラン5点
 ┣①政府案の輸入プログラム
 ┣②原産地表示
 ┣③定期的な査察
┣④プラン①-③が遵守されていなければ輸入停止措置可能
 ┗⑤国民に対してBSE問題に関する説明会開催
◇メリット3点
 ┣①国民にとって、選択の幅増加と牛肉価格の低下(※輸入禁止措置で100g当たりの価格が7%上昇)
 ┣②経済効果 (例として、輸入解禁ニュースで、吉野家の株価15.3万円→23万円)
┗③国にとって、米国からの経済制裁回避

国が食の安全を完全に担保できない以上、国民が自らの判断によって、食を選択するべきだとし、そういう意味において、選択肢の一つである米国産牛肉の輸入禁止措置は、妥当ではないとする。

■<否定側立論>
◇哲学:食の安全は国が担うべきである
◇デメリット1点
  ┗BSE感染の可能性が高まり、逆に牛肉の高騰を招く

国と国民では、輸入食品という、遠くて関知しにくいところからやってくるものに対して、判断基準、判断材料、判断力すべてにおいて国側が勝っている事から、食品の安全は国が担うべきとする。
その上で、感染牛の検出、特定危険部位(SRM)除去では安全を確保しきれない、つまり輸入プログラムの効力はないとし、国民を危険にさらす結果になると主張。さらに、国民の判断基準の拠り所となる原産地表示においても、加工食品、給食では表示されないこと、説明会のコスト拠出が不明などから、肯定側主張の脆弱性を露にしていく場面が光った。

■<否定第一反駁~肯定第一反駁>
否定側は立論の補強として、米国産牛肉の危険性をEUがレベル2から3へ引き上げたこと、SRMは現時点でわかっているという但し書きがつくことを証明し、未発見部位を想定するべきであり、SRM除去が危険除去につながらないことから、米国産牛肉、及び輸入プログラムでは危険性が拭えないとした。
これに対し、肯定側は否定側の(国産牛肉における)チェックは、ダブルチェック(全頭検査+SRM除去)だが、肯定側は輸入プログラムの2項目+監視体制のトリプルチェックであることから安全性が高いとした。しかし、否定側は立論で輸入プログラムの実効性に疑問を投げかけており、またプリオン検出限界月齢に関係なく、全頭検査が必要な意義・重要性を述べており、肯定側のダブルチェック内容と否定側のダブルチェック内容はイコールではないため、厳しい反駁となった。

■<否定最終弁論~肯定最終弁論>
情報量、判断基準とも圧倒的な国が安全を担うことと、肯定側メリットを取りにいくことと、どちらが国民にとって幸せなのか。この問いかけから始まった否定側最終弁論は、肯定側メリット一つ一つを、曖昧さとインパクトの程度を問い直しながら、潰していった。
これに対し、肯定側はようやくメリット3のインパクトを述べるも、時遅しであり、論の補強に繋がるものとはならず、否定側の論を崩すには至らなかった。

■<判定と総括>
否定側の見事な立論により、肯定側はこの時点で既に窮地に立っていたように思われる。しかし、そこで終わらず、冷静な分析と攻撃を兼ねたQ&A、論に厚みを持たせるような反駁、とその独特の雰囲気によって聞く側を飽きさせないところは、さすがBMディベートキングと思わせるところ。もちろん、否定側もこれにたじろぐどころか、最後まで余裕を見せる展開を見せ、立論から最終弁論まで終始、優位な試合運びだったといえよう。
力ある者同士が、お互いの力を発揮できるという意味での自身の楽しさ、そして最後まで聞くものを引きつける語りのうまさが際立つディベートであり、2006年の幕開けを飾るにふさわしい実力者同士の試合であった。

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