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2014.5.9.(金)
井上晋の「賛否両論のための基礎知識」
第7回 「解釈改憲の是非」(2014年5月9日)

ほぼ月イチコラム

ニコニコ超会議3出演時のイノウエ紹介ショット
(写真は、ニコニコ超会議3出演時のイノウエ紹介ショット)

時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第7回

みなさんゴールデンウィークは、いかがお過ごしでしたか。
飛び石連休でかつ、お天気もいまいちでしたので、
「安近短」で過ごしたという方も多いようです。

ゴールデンウィークのお休みの一つ、
5月3日は憲法記念日。

今回は、憲法について取り上げてみたいと思います。

論題はずばり
「解釈改憲の是非」です。

「解釈改憲」とは、「正規の手続によって憲法を改めるのではなく,条文の解釈を改めることで,事実上,規定の内容に,改正された場合と同程度の変更が生じること。」とあります。

かなり、強引な手続きに思われますが、賛否両論あります。

今回は、2つの新聞社にディベータ―となっていただき、
この問題を紐解いてみたいと思います。

まずは、肯定側代表は、産経新聞です。

産経新聞(3月1日)の主張をまとめると以下のようになります。
(原文は、こちら http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140301/plc14030103410004-n1.htm)

1、安倍首相の解釈改憲の姿勢を支持
2、閣議決定だけで変更は乱暴とするような意見は現実を踏まえておらず建設的でない
3、(なぜなら)集団的自衛権の行使を容認して日米共同の抑止力をたかめることは待ったなしの課題だから
4、解釈改憲も世界情勢などの内外の状況に即して、必要に応じた判断が求められる
5、これを認めないのは、議院内閣制を理解していない議論だ
6、過去においても集団的自衛権の憲法解釈は変更された前例がある

つまり、

現実的な世の中の変化に合わせて、首相を中心とした内閣が憲法の解釈を変えることは当然である。
その理由として、それが議院内閣制という政治システムであり、過去にもその事例があると主張しています。

現実的な世の中の変化とは、中国の経済力、軍事力の台頭や、日本周辺での領土問題の発生などを指しているいるものと思われます。
そういった意味では、「現実に即した政治を進めていかないといけない」という主張は説得力を持ちます。67年前と今では、世界情勢も異なるだろうというのは頷けます。

一方で、議院内閣制は解釈改憲を前提としているという主張はどうでしょうか。その主張については、具体的な理由や証拠はなく、強引に言い切っているようです。
議院内閣制を設定している憲法66条にもそのような規定はもちろんなく、現実に合わせて政治を変えるには、憲法を変えるというのが正式な手続きです。

この議論の背景には、集団的自衛権については、「もともと憲法では制限されておらず、過去の憲法解釈で決められてきたこと」という隠れた理由があります。
つまり、これまでも内閣が解釈を決めてきたことだから変えるのも閣議でOKというものです。

みなさんの判断はいかがでしょうか。

さて、否定側代表は朝日新聞(3月3日)です。
(原文はこちら http://www.asahi.com/articles/ASG2X54NYG2XUSPT00D.html)

1、集団的自衛権について歴代内閣は「憲法はこの権利を使うことを許していない」としてきた
2、これは、戦後日本が憲法9条による平和主義を守ってきたからである
(解釈改憲は、平和主義を崩す)
3、一方で、現実社会の変化に対して、時々の政権は苦しい辻褄合わせを重ねてきているという事実もある
4、集団的自衛権の行使については、長年国民との間で培ってきた政府と国民との合意だ
5、時の首相の一存で変えられれば立憲主義は壊れてしまう
6、それでも集団的自衛権が必要であれば、96条に従い憲法を変えるべきだ
7、旧日本軍の被害にあった国々の心情も考慮すべきだ

朝日新聞は、
集団的自衛権の容認そのものに対する反対の理由として、日本憲法大原則の1つである平和主義との矛盾を上げています。
これは、わかり易い議論です。

また、集団的自衛権の解釈については、これまでの政府と国民との合意だとありますが、その証拠は不明瞭です。

さらに、現実の運用に対して「苦しい辻褄合わせ」と認めながら、具体的にどのような手法をとるべきかを示していません。
「苦しい辻褄合わせのまま頑張ろう」と言っているようにも取れます。

両社の主張をみると、
「平和主義を掲げた理想の国家であり続けたい」という理想と
「そうとばかり言っていられない」という現実問題との大きな矛盾があることが分かります。

この矛盾に対する手法として、解釈改憲という手法論の是非が問われているようです。

解釈改憲という手法だけ見れば、正しくないという結論になりそうですが、現実に対処する他の方法論を反対陣営は示せていないようです。

使えるディベートセミナー」では、
「「矛盾」とは、物事の発展の原動力である」ということを学びます。
今回のテーマである現実と理想の矛盾も日本という国の発展の原動力にしなければなりません。

その為の一つの答えが、やはり日本国憲法には記されています。

日本国憲法 第12条
この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

この矛盾にしっかりと立ち向かうべきは、政治家ではなく我々なのですね。

では、ごきげんよう。

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