講評

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論題

BMディベートマニア選手権Ⅲ
「日本政府は、自衛隊を軍隊とすべし」

講評:久保田浩

肯定側:HMS24(高澤・中西)
否定側:まほ龍∞賢゛一郎(太田・本間)
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数 53名
肯定側62.97P(4票) 否定側 72.33P(49票)

■<肯定立論>
比較優位型の立論で始まる。
プランは以下の2点。
P①憲法9条の改正
P②軍法会議の設置

P①-1
憲法9条2項の改正
第三国による攻撃に対しての自衛(交戦権)を可能とする。
P①-2
国連の要請によって軍隊の海外派兵を可能とする。

ポイントとなるのは、以下の否定側Q&Aで明確になったように、軍備力(国防費)は変わらないということである。何故「自衛隊を国防軍」とする必要があるのかを立証 するのに、ダイナミックさに欠けるプランであった。

メリットは、3点
M①自国の安全
M②日米安保条約の改善
M③国際社会でのプレゼンスアップ

M①については、周辺諸国(特にここ最近国防費を増やしている中国、あるいは北朝 鮮)に対する抑止力がアップすることを発生過程とした。
M②については、自主防衛が可能なことを発生過程として、メリットの詳細を次の2 点とした。
M②-1
米国追随の政治が改善されること。
M②-2
在日米軍が既に日本を守っていないという例を挙げ、機能不全に陥っている日米安保 条約の改善につながること。
M③については、武力を伴う国際貢献が可能になることを発生過程とした。

■<否定Q&A>
重要なQ&Aは2点
①自衛隊と軍隊の違いについて
・軍備力はアップしないこと
・国防費は変わらないこと
を確認。違いとなるのは、
・交戦権を認めること
・海外派兵を認めること(国連の要請がある場合に限る)
②日米関係について
・海外派兵は米国の要請では行わないことを確認

■<否定立論>
難易度の高いカウンタープランを採用
プランは以下の6点。
CP①アジア内で軍事同盟
CP②日米安保は現状維持
CP③対同盟国(アジア)に対する技術支援を行う
CP④同盟国は日本に対して集団的自衛権を行使する(日本は行使しない)
CP⑤同盟国に対しては恒久的に武力行使を行わない
CP⑥同盟諸国との定期的なミーティングを開催

以下によって肯定側のメリットがたたないことを論証。
対M①攻撃力を持たない限り抑止力にはつながらない
またCP②で対応可能。
対M②アメリカの要請によって派兵できないとすると、日米安保の改善にはつながら ない
対M③日本はODAで第一位。既に世界のプレゼンスが高い。

さらにデメリット
D①アジア諸国との関係悪化(evi.1998日本の論点)
D②現状の平和憲法にあるように反戦を訴えていけない(evi.「戦争と平和」より平和憲法のすばらしさ、普遍性)
D③テロの可能性増

■<反駁および最終弁論でのポイント>
否定側が肯定側の立論をつぶしに行く形で試合が展開されていった。
具体的には、
M①について
否定)攻撃力を持たない限り抑止力にはつながらない
肯定)憲法に交戦権を認めることを明記するだけで抑止力につながる
否定)攻撃が出来ない限り、抑止力ではなく反発を招くだけである。
←これに対しては肯定側も有効な反駁をあげることが出来なかった。

更に、
否定)アジア諸国に対する反発が、アジア諸国との関係悪化を招くデメリット (D①)につながることを強調。

M②について
アメリカの要請では派兵を行わないとする肯定側に対して、日米安保が今後どうなるのかを問う否定側に有効な反駁がみられなかった。
→(自主防衛によって日米安保が改善されるという肯定側の論だが、防衛力がアップ しない以上は、現状とは変わりがない。すなわちメリットは発生しないと判断。)

M③について
ODA拠出額一位である日本は既に世界のプレゼンスが高いという否定側に対して、肯 定側は、軍隊(武力)の派兵がプレゼンスの向上につながることを繰り返し強調。

D②について
平和憲法が世界に広がらないことを理由に、「いいものではない」と肯定側は主張したものの、それだけの理由では「いいものではない」と判断できないため(つまり何 故広がらないのかの要因分析がなかったため)、D②は残ったものと判断した。

■<総括および判定>
両者のメリットデメリットを天秤にかける形で評価を行った結果、否定側の勝利と判定した。
M①に対しては、抑止力と反発は違うものと判断し、メリットは発生しないと判断。 逆に反発によるD①のデメリットが生じると判断した。
M②に対しては、上述の通りだが、防衛力が変わらない以上は自主防衛も現状と変わらず(発生過程は認められず)、日米安保の改善にはつながらないと判断した。
M③に対しては、武力を伴う国際貢献でプレゼンスがあがるというメリットは残るものの、既に高いプレゼンスがあるという否定側に対して反駁がなかったことから、そ のメリットは僅少と判断した。

逆にD①が完全に残ったこと、及びD②、D③も残ったことから否定側の勝利と判定した。
ただし、否定側もD③において立証責任が果たされなかったことから(試合中に肯定 側からの指摘はなかったが)、そのデメリットは僅少とした。

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