講評

講評

論題

BMディベートグランプリ2004 予選リーグ~決勝トーナメント 予選リーグ第3試合
「日本政府は、国連安全保障理事会の常任理事国になるべし」

講評:奥山真

肯定側:本間賢一
否定側:中西夏雄
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数 13名
肯定側 63.14P(10票) 否定側 49.75P(3票)

■<概   略>
肯定側は分かりやすいシンプルな構成で真っ向勝負。対する否定側は、肯定側の立証に直接付き合わないスタンスを取った為、立論が終わった時点で噛み合わない試合になることが予想された。しかし、肯定側本間は丁寧かつ効果的な反論を展開、最終弁論もうまくまとめ上げ、試合的には好ゲームを演出。ディベート的には肯定側メリットの立証を否定側が反証できず、また否定側デメリットは肯定側によってつぶされ、肯定側の完封勝利となった。

■<肯定側立論>
◇哲学、理念
 『安全保障体制の強化』

◇プラン2点
 ┣①敵国条項の削除
 ┗②安保理における議決事項は国会承認プロセスを必要とする

◇メリット2点
 ┣①日本の安全保障体制が向上
 ┗②世界の安全保障体制が向上

メリットは2点とも重要性の点においては曖昧さは残ったが、
発生過程がしっかりと証明されており、立証されたと判断した。
メリット①に関しては、
a)安保理のコントロール能力アップ
b)他国と友好関係が構築できる という2点の発生過程を有効打とした。
また、元外務次官の発言を証拠資料に取り、安保理に参加して
いないことで国際的な政策への影響力を発揮できないことを証明した。
メリット②に関しては、常任理事5カ国(P5)に日本が協力して平和的な解決に導いたカンボジアの例を証拠資料に挙げ、世界の安全保障に日本が果たしうる役割を証明。
また、日本こそが常任理事国入りするべき理由を3点(平和憲法を持つ、パレスチナと友好関係にある、国連分担比率高い)挙げることでメリット②を補強した。
久しぶりに本間らしい、論理的でかつ合理的な立論を見ることができた。

■<否定側尋問>
否定側中西の攻撃的な尋問は今回見られなかったのが残念。量、質ともに不十分であり、有効な尋問は見られなかった。

■<否定側立論>
◇哲学、理念
 『常任理事国入りは時期尚早であり、現時点ではデメリットしか生まない』

◇デメリット2点
 ┣①国際的評価ダウン
 ┗②憲法第9条改憲の恐れ

デメリット①に関しては、発生過程(アメリカの反対があるので日本は独自色を打ち出すことができず、国際的評価が下がる)は説明されているものの、深刻性に関する論証がなく、デメリットの大きさが不透明。また、デメリット②に関しては、今回の論題のプラン制限「改憲は行わない」に真っ向から対立する挑戦的なデメリット。発生過程としては、日本の常任理事国入りがPKO等軍事貢献のプレッシャーにより軍事的行動が増加することを指摘。また、自衛隊を例に取り、平和憲法が拡大解釈されてきた歴史を発生過程の補強とした。
しかし、プラン制限で「改憲は行わない」が前提となっている以上、肯定側プランによるデメリット②は発生しないと判断した。
一方、肯定側メリット①に対する反論として、「日本にとって不利な安保理決議が議決される可能性」について言及したが、可能性がゼロに近いことを証明しなければ反証したことにはならず、肯定側メリットの肝である「国際的な政策への影響力が発揮できる」という点に関しての有効な反論にはなっていない。
またメリット②に対して、「今でも国際貢献しているのだから肯定側プランによる固有のメリットではない」と反論するも、肯定側立論のカンボジア和平において日本が果たした役割を否定している訳ではないので、ともに反証責任を果たしていないと判断した。一点指摘しなくてはならない重要な点としては、否定側の理念は理念になっていないという点である。時期尚早を謳うのなら、まず判断基準となる条件を提示する必要がある。条件なしに時期尚早論をぶっても、肯定側の理念「(日本と世界の)安全保障体制向上」に対抗することはできない。

■<肯定側尋問>
肯定側本間のキレのあるピンポイント爆撃が光る。メリットへの反駁につながる尋問ではなく、デメリットに関する尋問に大半の時間を割いた。デメリット①の具体的な悪影響について言及し、日本が独自色を出すことでアメリカの反対がどの程度想定できるのか、また米国反対による日米安保への影響度合いにまで言及した点は、肯定側第一反駁での有効な反論となった為、有効打と判断した。

■<否定第一反駁~肯定第一反駁>
否定側中西は肯定側メリットに対する反証が必要な局面であったが、デメリットの補強に全ての時間を費やした。否定側から試合を噛み合わせようとする努力が見られなかったのが残念。
対する肯定側本間は丁寧に争点を絞り込んだ。
特にデメリット①に対する反論として、「日本が独自色を出しても、アメリカは日本を守らなくてはならない」という点に関して、証拠資料を提示し、さらに否定側が主張するデメリットの深刻性「アジアの反対が日本を軽視する姿勢につながる」という点に関して、論理の飛躍と切り捨てた。量、質ともに申し分ない肯定側第一反駁であった。

■ <否定最終弁論~肯定最終弁論>
否定側中西の最終弁論は自説をただ繰り返す単調な展開。哲学・理念の不在がここでも祟っている。つまり、哲学・理念がない為、レバレッジ(てこ)が効かないのだ。
一方、肯定側本間は余裕の最終弁論。否定側と肯定側の論についての比較衡量は、適切な証拠資料の引用と併せて、非常に優れていた。難を言えば、哲学・理念の再構成がかけられなかった点が唯一残念。

■<判定と総括>
2点のメリットをがっちり守り、デメリットを無効化した肯定側の完封勝利。
否定側敗因は立論が全て。
①反証とはどういうことか
ネガティブブロックを最大限に活かすにはどうすれば良いか
③哲学・理念とは何か について再考を強く促したい。

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