講評

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論題

BMニューディベートフロンティア2005 ふるいわけマッチ 第1試合
「論題:日本政府はデノミネーションを実施すべし」

講評:井上晋

肯定側:久保田浩・中西夏雄
否定側:中村貴裕・本間賢一 
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数7名
肯定側 3票(50.00P) 否定側 4票(54.75P)

■<概   略>
肯定側は、デノミは円の国際化につながるという主張をもとに展開。対する否定側は、デノミは、国民の負担と混乱をまねくというスタンス。
争点は、デノミ⇒わかりやすさUP⇒国際化 というリンクが成立するか否かであったが、「デノミ=わかりやすさのUP」を最後まで立証しきれず、否定側の勝ちとなった。

■<肯定側立論>
◇哲学・理念:『デノミは円の国際化につながる』
◇プラン3点:『デノミの実施』
 ┣①2007年より、1/100デノミを実施
 ┣②1年間の周知期間を設ける
 ┣③半年間は、新旧両単位の併記を行う
 ┗④2010年に移行終了
◇メリット3点
 ┣①円の国際化
 ┣②景気刺激
 ┗③戦後インフレの後始末

M1の発生過程として、通貨の価値尺度機能を上げ、通貨機能をUPさせることが、国際化への道(第一歩である)という論を展開するが、ドルに対する3桁表示が、1桁表示になることが、「なぜ」価値尺度機能をUPさせるのかが、不明確なままであった。国際化の重要性の説明には多くの時間が割かれたが、国際化しなければ、その重要性もむなしいだけ。
M2については、研究所のデータを引用し立証。
M3については、時間なくラベルの提示のみで立証なし。

■<否定側尋問>
否定側は尋問で想定どおり、M1の発生過程に突っ込んでゆく。なぜ、デノミがわかりやすさにつながるのか? しかし、質問に対しての明確な答えは出てこないままであった。

■<否定側立論>
◇哲学・理念:『デノミは国民に負担と混乱をもたらす』
◇デメリット3点
 ┣①コスト
 ┣②通貨の機能低下
 ┗③混乱
D1については、2兆円のコストが、民間のIT投資を減速させると主張。そのエビデンスとして2000年問題の対応時の事例を提示。 IT化の推進が企業の競争力の源であることを主張し、重要性を補強する。
D2については、小数点以下の計算が増える、補助単位の記載がわずらわしいなどの主張を行うが、立証、インパクトともに、不十分。気持ちは、わかるのだが、というレベル。
D3の混乱についても、そのインパクトがまったく述べられていなかった。

争点となるM1への反証は、
①日本経済が悪いので
②慣行上(商取引の)の理由で、基軸通貨のシフトが困難
③アジアの中での日本との取引少ない
という3点の理由をあげる。
それぞれ、円の国際化が進まないという理由であるが、デノミ⇒わかりやすさ⇒国際 化のリンクを断つものでなかった。そのため、後半以降も、議論はかみ合わないものとなる。

■<肯定側尋問>
尋問というよりも、肯定側の持論の一部を質問で持って認めさせるような応酬であり、見所に欠けた。曰く、国際化はOKか? デノミで価値尺度機能はUPするか?など、ゆへに、ここでも議論はかみ合わないままとなる。

■<否定第一反駁~最終弁論>
試合は、すれ違ったまた、最終弁論まで進むこととなる。
否定側は、デノミと国際化のリンクを直接的でないと否定するのに対し、肯定側は、国際化への第一歩という主張。この土俵のズレをあわせることができなかったのは、両ディベーターの力量といえよう。
お互いの主張をしっかりと受け止めた上での反証がなく、一方通行のディベートは、悲しさとむずがゆさが残る。そのことを痛感した試合であった。

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