講評

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論題

BM登龍門Ⅳ-若武者杯- 第1試合
「論題:日本政府は、首相公選制を導入すべし」

講評:中村雅芳

肯定側:ディベーターJ・久保田
否定側:ディベーターK・奥山
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数 14名
肯定側 46.72P(1票) 否定側 56.66P(13票)

■<概   略>
首相公選制の導入によって国民を政治に巻きこみ、本来の民主主義を実現したいという肯定側。
一方、国民に首相を選ぶ資質はないという否定側。
票数は大きく差がついたが、お互いの主張が絡み合うぶつかり合いになった。

■<肯定側立論>
◇哲学・理念:『民主主義の理念に基づいた政治の実現』
◇プラン1点:
 ┗①首相立候補者はマニュフェストを提示。これを実現できるよう実行委員会を設立

◇メリット4点
 ┣①国民の政治意識が高まる
 ┣②国民のチェックをもとに首相が責任を持つ体制になる
 ┣③新たな人材の発掘につながる
 ┗④国家社会への信頼が得られる

国民の意思が政治に反映されていないことをevidenceを用いて証明。国民の民意に従った政治が実現でき、また国民自体にも責任が生じるため参加意識が生まれることを示した。
このM1が肯定側の柱である。M2は首相の公約違反がまかり通っている現状、M3で党内の利害関係に人材が埋もれている現状、M4で政治が不安定な現状、など現状の問題点を列挙し変えていく必要性を訴えた。

■<否定側尋問>
プランに公約違反を起こした場合のリコール措置がないことを突いた。またM1の発生過程とインパクトの具体的数値を求め、崩しにかかった。

■<否定側立論>
◇哲学・理念:『首相公選制は人気政治につながり立法・行政の分裂を招く可能性がある』
◇デメリット2点
 ┣①不適切な人材が選定される可能性がある
 ┗②政治が停滞する

まず、デメリットを述べる。
D1:国民には適切な人材を選定できる資質がないことを証明。国民はマスコミに影響されやすい、またマスコミが国民を誘導しやすいといったevidenceを挙げ、国民の資質に疑念を抱かせる。
D2:首相が与党と対立した場合に政治が停滞する可能性を挙げる。
次に肯定側への反論も行った。M1の政治意識に対しては定量的でないこと、M2は公約が果たせなかった場合の責任対処が不明確であること、M3.4は政治の質が崩れることを挙げて反論した。デメリット発生過程の証明、メリット発生過程への反論ともに論拠が明確であり、肯定側へ大きなプレッシャーを与えた。プランの不備をつくところもさすがである。

■<肯定側尋問>
首相の候補者が多いほうがよいのでは、と突いたが否定側に質の低下を招く可能性がある、と跳ね返される。D2の政治停滞の可能性を突くも、論拠が崩せないためそこで止まってしまう。有効な尋問はできなかった。

■<否定第一反駁~最終弁論>
否定側はD1、D2とも論拠をデータ含め明確に示せた。D1ではマスコミの視聴率を意識した誘導に国民が踊らされてしまう危険があり、その対策がきちんとされている議院内閣制のよさを打ち消してしまうことを示す。
一方、肯定側は現状の議院内閣制で理想的な首相を選べていないこと、首相を選定する母集団である国会議員は国民が選挙で選んでいるから国民にはその能力があることを示したがやや遅かったか。
同じくM1の論拠として多数決の原則、M3の選挙の有用性など、見事な反論を備えていたにも関わらずそれが最終弁論まで出てこなかったのは悔いが残る。

■<総括>
果たして直接民主主義と間接民主主義どちらが日本の将来に有益であるのか。その中心論議として「国民に首相を選ぶ資質(能力)があるか」の論拠証明が勝敗を分けたと言えるだろう。
定量化しにくい効果を巧みに突き、人気政治に拍車をかけてしまう可能性を分かりやすく伝えた否定側のスタンスは見事であった。一方、肯定側は現状分析がきちんとされており、議院内閣制が機能しきれていない説明はできているものの、プランを取り入れて本当に変わるのかを示し切れなかった。
ディベート初挑戦のディベーターJ・ディベーターK両氏とも念入りな準備によって噛み合った議論を展開できた功績は大きい。2人の今後に大きな期待を抱かせる一戦であった。

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