講評

講評

論題

BMファイナルカウントディベート2005  Dash Burning 
「論題:日本は、米国産牛肉の輸入を再開すべし。是か非か?」

講評:中村貴裕

肯定側:中西・ディベーターA
否定側:井上・ディベーターP
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数 10名
肯定側 9票(58.02P) 否定側 1票(47.75P)

■<概  略>
安全の基準は、国際基準か、日本人の価値観か。
現状の日本の基準は過剰であり国際基準に下げるべきだと主張する肯定側に対し、日本人の食の安全への価値観は日本人の手で定めるべきだと主張する否定側の真っ向勝負となった。

■<肯定側立論>
◇哲学:OIEの基準が国際的な基準であり、これを遵守する事で輸入の恩恵を受ける
◇プラン2点
 ┣①政府主導の輸入プログラム(特定危険部位の排除)
 ┗②20ヶ月以下の牛肉に限定(出生地証明書をつける A40の判定あるもの)
◇メリット2点
 ┣①消費者にとって、貿易の恩恵(牛肉価格の低減)を受けられる(※輸入禁止措置で牛肉価格が340円→370円)
 ┗②国にとって、他国との貿易協調(安定した貿易行為)ができる

現状の日本の基準は過剰であり、牛肉価格の高騰や、貿易面での他国との国際協調を妨げているものである。特に日本は食において輸入に頼る部分が大きく、国際協調のインパクトは大きいと主張する。

■<否定側立論>
◇哲学:日本人の食の安全への価値観を貫くべき
◇デメリット1点
  ┗食の安全が失われる
<理由>
① 米国運用体制に不備がある(牛の年齢等、主観的判断で決められている部分がある)
② フリオン病に感染した人間が既に存在する
③ OIEが制定されてからまだ3年しか経ていない(OIEの基準は「8年間 問題が発生しなければ大丈夫」との基準であり、3年経過では少ない)

運用体制の不備、実在する被害者資料の提示のデータを示した上で、肯定側プランを導入すると食の安全が失われると主張。もし肯定側プランを導入したとしても、メリットである 牛肉価格の低減はなく、この論証もされていない、と指摘した。

■<否定第一反駁~肯定第一反駁>
否定側は立論の補強として、牛肉の輸入再開に不安を感じる人が60%、再開されたとしても輸入牛肉を購入しないと明言している人が25%もいるアンケート結果などから、日本人の価値観として牛肉再輸入は受け入れられないと主張。米国では所有者が変わる事もあり検査体制の不備は解消しようがないと主張した。
これに対し、肯定側は実績として0.95%以下しかはずれがなく、主観では無いと主張。あらためて、国際基準の妥当性を指摘し、貿易の自由の重要性を述べた。

■<否定最終弁論~肯定最終弁論>
安全、安心の両方が必要だとする否定側と、安全があれば十分だと主張する肯定側。否定側はあらためて「牛肉輸入禁止の現状に日本人は困っていない」とのアンケート結果を提示し、現状の輸入禁止状態こそが、安全&安心が保たれると主張した。肯定側は「特定部位を取り除けば、輸入再開で新たに日本に入ってくる肉も、現状 日本で販売されている肉も、リスクは同じである」と主張、否定側が用いた各種アンケート結果の元データの7割の人が「米国からの牛肉輸入は再開される」と考えており、現状困っていないのは一時的な措置であるから、と主張し、データの根底を崩しにかかった。

■<判定と総括>
まずは、今回ディベートデビューを果たしたディベーターP氏の検討に拍手を送りたい。たじろぐ部分は多々あったが、井上の助けを得ながら、堂々とオーディエンスの目を見て訴えていた。対する中西・ディベーターAは抜群のコンビネーションとパフォーマンスで会場を沸かした。途中、否定側から牛肉の金額が牛肉輸入を再開した現状で下がっていない事を指摘したが、「今回のディベートの前提は輸入解禁前であり、そんな事を言われても、僕らには全くわかりません!」等と笑顔で発言し、会場を笑いの渦に包んだ。
結果は 過剰な安全基準を排除し、メリット2点目で掲げた「国際貿易の恩恵を受ける」に対する攻撃を受けておらず、メリット2を残した肯定側が ジャッジ投票9対1、ポイント58.02対47.75の大差で勝利を決めた。
・・・・しかしながら、否定側に入れた1票は、なんとディベート暦16年、メインジャッジの太田龍樹。メインジャッジからの解説にて、否定側からの反駁がなかったメリット2を含め、肯定側が立証責任を果たしていないと判断が下った。指摘を受けてあらためて振り返ってみると、確かにメリット1は輸入再開で価格が下がる証明がされておらず、メリット2も、なぜ牛肉輸入の再開が「他国との国際協調」につながるのかの説明や、国際協調による具体的インパクトが述べれらておらず、「現状を改革する事の必要性」を立証していない。オーディエンス&ジャッジメンバー一堂、メインジャッジの総括に納得し反省すると共に、ジャッジについても、まだまだ勉強が足りない事を痛感させられる1戦となった。

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