講評

講評

論題

BM漢祭り2004 予選第2試合
「日本の公立小中学校は小・中一貫教育にすべし」

講評:奥山真

肯定側:久保田浩 ディベートナイト
否定側:高澤拓志
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数6名
肯定側 54.28P(4票) 否定側 50.75P(2票)

既に1勝を挙げているディベートナイト久保田とディベートグラディ エーターに王手をかけている高澤のガチンコ勝負。
ディベートナイトにストップをかけたい高澤だが、緻密さで定評があるナイト久保田のディベートを崩せるか?

■<概   略>
肯定側は「生きる力」を持った人材育成が長期的な日本の国益につながるという主張を展開。一方、否定側は肯定側プランが公教育の理念を壊すものであるとの論陣で対向。

■<肯定側立論>
◇プラン4点
 ┣①2006年4月から、小中一貫教育を全国でスタート
 ┣②1~4年目:基礎教育の徹底、5~9年目:個性を伸ばす教育
 ┣③5、7年目に成果測定テストを実施、結果をフィードバックする
 ┗④必要な法改正を行う

◇メリット4点
 ┣①子どもの心理的負担が減少
 ┣②落ちこぼれが減少
 ┣③生きる力の育成
 ┗④教育機会の不平等是正

立論は心身両面における子どもの成長についての分析から入るスマー トな構成で始まった。
メリット①は小学校から中学校に上がる際の環 境変化が子どもの心理的負担に繋がるとして、京都市における実例を 挙げて証明されていた。
メリット②については、プラン③頼みの発生 過程。論題とのリンクの薄さ、またフィードバックする受け皿にあた るカウンターパートについて論証がなく、やや言いっ放しの感じを受けた。
メリット③については、「基礎学力の向上」イコール「生きる力」としているが、プラン②のみで「基礎学力が向上」するかは定かではなく、「生きる力」という抽象的なものに「基礎学力」がどう関わるのかが不明であった為、立証責任を果たしていないと判断した。
メリット④については、現在実施されている教育特区の小中一貫校と通常公立校の間にある教育機会の不平等に着目し、それが是正できるというメリット。ナイト久保田ならではの鋭い着眼点といえる。
まとめるとメリット①④が立証され、②③は不十分という立ち上がり。否定側高澤はどう対向していくのだろうか?

■<否定側立論>
◇デメリット3点
 ┣①格差と序列が生まれる
 ┣②6・3制廃止の意味がない
 ┗③内容乏しい
立論構成は、哲学⇒デメリット三点の論証⇒メリットの反駁という流れ。しかしながら、肯定側と比較すると極めて分かり辛いものであった。高澤には珍しくラベリングナンバリングが冴えない。どうした高澤!?分かり辛さと併せて、デメリットの発生過程、証拠資料等も不十分であった。唯一、論拠が証拠資料と共に提示されていたデメリット②も、後に続く肯定側尋問の中で、「小中学校の教員の相互交流は、小中の段差を解決するか?」という質問に対して、「はい」と答えてしまい、完全なターンアラウンドとなってしまう。一方、メリットへの反駁は①~③まで、④の前に時間切れとなる苦しい展開。第一反駁での巻き返しなるか?

■<否定側第一反駁>
デメリット②③の補強、メリット①~③への反駁の補強はなく、否定側理念である「小中一貫制は公教育を壊す」にフォーカスした。デメリット①「格差と序列」について再強調したが、量・質ともに不十分。ネガティブ・ブロックが不発に終わった恰好となった。

■<肯定側第一反駁>
本来ならば、否定側立論・第一反駁を受けて非常に重たいパートとなるはずの肯定側第一反駁だが、否定側デメリット②③の論証が不十分であった為、ナイト久保田は余裕の展開。「公教育=平等」という価値を否定側と共有しつつ、メリット④による不平等の是正に触れた上で、否定側唯一のポイントであるデメリット①への攻撃という反駁の流れは流石である。

■<否定側最終弁論>
質・量ともに乏しい最終弁論となってしまった。原因は否定側第一反駁につながらない否定側立論にあったと分析せざるを得ない。最後まで否定側の理念の強調に終始した感は否めず、肯定側プランを崩すには至らなかった。

■<肯定側最終弁論>
メリットの建て直しを中心とした最終弁論。しかし、メリット3の補強に使った証拠資料がニューアーギュメントとなる。「基礎学習」=「生きる力」という論拠は肯定側立論の段階で提示されて然るべき。当然、ジャッジには判断されずメリット③は立たない。

■<判定と総括>
判定は、メリット①④を残すことができた肯定側の勝利。デメリットは全て潰れてしまい、否定側理念も残らなかった形である。ただし、否定側の現状肯定の立場をはっきりと打ち出した点は否定側の戦略としては優れている。
デメリットの論証、メリットへの反証まで高められなかった点は残念であった。貴重な2勝目を手にしたナイト久保田、このまま突っ走ってしまうのか? それとも中西・奥山がストップをかけられるのか? 2月以降も目が離せない。

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