講評

講評

論題

BM登龍門Ⅱ
「日本政府は、裁判員制度を導入すべし」

講評:久保田浩

肯定側:ディベーターG・ディベーターD
否定側:ディベーターC・ディベーターL 
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数17名
肯定側 38.3P(0票) 否定側 55.32P(17票)

■<肯定立論>
「よりよい裁判の実現」を哲学に掲げ、比較優位型の立論で始まる。
裁判員制導入のプランにより生じるメリットは以下の3点。

M①
より公正な裁判の実現
M②
裁判の迅速化
M③
国民的基盤の確立

プランは政府案の通り

発生過程は以下の通り
M①
イ.多様な視点が取り入れられるから。
ロ.国民によるチェック機能が働くから
M②
プロではない国民が裁判に参加するため、拘束も限られるから。
M③
国民の主体的参加(司法への直接参加)が可能となるから。

一方、否定側の立論は以下の通り、

■<否定立論>

司法においては間接民主主義こそが公正な裁判を行う上で必要なことである。として、デメリットの3点。

D①
誤審・冤罪の発生
D②
国民の負担増
D③
行動の自由・言論の自由に制限

発生過程は以下の通り。
D①
イ.現状、国民の裁判に対する関心が低い
ロ.国民は訓練も受けていないため、人を裁く能力が低い
ハ.主体的に権利を行使していない
  ex.検察審査会での低い参加率や、アンケート調査による結果
D②
イ.精神的側面として
-一生守秘義務に縛られること
-拘束期間中、家族との面会も限られること
ロ.経済的側面として
-日当が低い
ハ.物理的側面として
-拘束されること
D③
憲法が侵害されることから重要なデメリットである。

そして肯定側のメリットに対して、
M①多様な視点と言っても、国民には能力がないため(D①)意味がないこと。
M②プロの裁判官を増やせば解決する問題であり、逆にプラン実行により、裁判員に丁寧に教えることが時間の長期化につながる恐れがある。

■<反駁のポイント>
否定側)立論で出したデメリットの補強を行った。
D①について
イギリスやOJシンプソンに見られたような陪審員制の例を挙げ、国民には人を裁く能力がないことを強調。
D②について
物理的拘束が1日、2日といった短期間では終わらないこと。
D③について
裁判員に対する取材が一切禁止であることや、一生守秘義務を負うことをその発生過程とした。

肯定側)否定側の反駁に返す形で、
D①本件の裁判員制と陪審制は異なること。
→陪審制はプロが入らないのに対し、裁判員制はプロが入り、しかもそのプロが一人以上入る形の多数決で決定されることから、誤審が起きることはない。
D②本プランでは、あらかじめ論点を整理しておく必要があり、それにより迅速化が図れること。

■<最終弁論のポイント>
否定側)
D①について
(反駁において)陪審制を例にあげたのは、あくまで国民に人を裁く能力がないことの例である。
M②について
(繰り返し)丁寧に説明する必要から迅速化にはつながらないこと。
M③について
国民的基盤の重要性が見出せないこと

また、M①について
多様な視点を入れる効果があるとは考えられないとし、
まとめとして、
国民の資質があがってから直接民主主義に移行すべきとした。

肯定側)
「10人の有罪を見逃すことよりも、1人の無罪を見つけることの方が大事である。」とした上で、
M①により、それが実現可能であること。

D①について
人を裁く上で、無関心ではいられなくなること。またそれが、日本を良くしていこうという意識につながること。
M②について
公正な裁判を行う上で、丁寧な説明は必要であること。
とした。

■<判定>
最終弁論で肯定側は巻き返しを図ったものの、否定側の勝利とした。
理由は、肯定側のメリットに対して、否定側のデメリットの方が大きく上回っていたため。
M① : 多様な視点を入れることの重要性が薄かった。
M② : 迅速化が図れる発生過程があいまいであり、結果、効果が見えなかった。
M③ : 国民的基盤の確立がなぜ重要なのか、なぜ国民的基盤が確立するのかが見えなかった。

一方、
D① : 訓練されていない国民が人を裁く能力はないというD①は最後まで残った。
D② : 精神的・経済的・物理的な国民の負担増も残った。
D③ : 憲法に抵触するこのデメリットも残った。

使えるディベートセミナー

企業研修カフェテリアプラン提案!

PAGE TOP