講評

講評

論題

BM -夏の陣2005- エキサイティングバトル東西対抗戦 第2試合
「日本は、いわゆる第3のビールに対し課税強化すべし」

講評:中村雅芳

肯定側:井上晋 
否定側:中西夏雄
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数 11名
肯定側 3票(57.1P) 否定側 8票(67.15P)

■<概   略>
国としてのスタンスを明確にし消費者への不安も高まると主張する肯定側に対し、企業・国・消費者いずれの観点からも課税すればデメリットしか出てこないと主張する否定側。
ビールとは?酒とは?身近なものを様々な論点から斬り砕いた両者の試合は観客を興奮の渦に巻き込んだ。

■<肯定側立論>
◇定義:第3のビールとは
 ┗◎主原料を麦芽やホップなどに限定しないビール風味の
アルコール飲料の俗称

◇哲学
 ┗◎同種類の酒には同じ税率を適用することで課税の公平性を守る

◇メリット
 ┣①国のメリット
  (1)財政確保
   ・ビール税収が1.1兆円から1.4兆円になり安定した税収が見込める
  (2)租税の原則を守る
   ・税金は公平であるべきであり、それが国と国民の信頼関係に
    つながる
   ・350ml缶で比較すると、ビール税は77円だが第3ビールは24円
    この差は大きすぎる
   ・evi)日経BP
    課税強化し価格が変わっても第3ビールを選ぶ人は42.9%いる。

 ┗②消費者のメリット
  ・現在の価格では若年層でも簡単に入手できてしまう。
   これによる飲酒の被害が増大する
   evi)イッキ飲みによる学生の死亡者20年間で70名
   evi)アメリカでは交通事故の50%は飲酒運転

この段階では財源確保や低年齢層へのアルコール浸透が危険であることがニュアンスとして伝わる。が、インパクトの説明に欠けていることが次の尋問で露呈されることになる

■<否定側尋問>
メリット①では消費者の購買意欲は価格に依存しないと言っているが、
メリット②では安価が低年齢層への浸透の原因であるとの主張は矛盾している点を突く。見事!
またビールと第3のビールが同じである定義を、酒税法を絡めて明確にさせた。非常に鋭い尋問であり、ここで肯定側の立論が音を立てて崩れはじめる・・・

■<否定側立論>
◇哲学
 ┗◎第3のビールへの課税は、庶民のニーズを無視し企業努力までをも
   無視した横暴とも言える施策である。
   そもそもこれは、ビールとは全く異なる次世代のアルコール飲料である

◇デメリット
 ┣①企業の商品開発意欲をそぐ
  ・ビール離れが進んでいるが、それはビールの苦味が原因である。
   企業はこれを抑えることを目的として開発を進めた。
   税金逃れが目的ではない(eviあり)
  ・ビール風味であれば全て課税するというのは国の暴挙である。
  ・日本は資源のない技術立国である。企業のモチベーションを
   無視すれば将来の日本の技術革新に影響をきたす
 ┗②消費者の楽しみを奪う
  ・アルコールの効用には、酔うことによる食欲増進や
   人間関係の円滑化などが挙げられる。第3ビールが得にくくなれば
   それだけ消費者の楽しみが失われる
   evi)三菱総研市場調査
    第3のビールが飲みやすい人は83.5%
    税率がアップしたら飲まなくなると人は43%

◇メリットへの反駁
 ┣①(1)財政確保 
    →0.3兆円の数字は第3のビールだけではない
     0.3兆円という数字が国の財政にどれだけ影響するのか不明       
   (2)公平制
    →第3ビールがビールと同じでないため公平か比較不可
 ┗②消費者のメリット
   矛盾点の再アピール
 
第3のビールはビールと同じであるのか。その違いを企業のマーケティング方法や日本の将来像にまで絡めた立論はよく整理されていた。またデータや資料の使い方も的確であり、課税強化によるデメリットを示すインパクトもよく伝わってきた。
この時点で肯定側に対するブロックが固まりつつある。

■<肯定側尋問>
発売目的は脱税であるか→No
では発売目的は?→市場ニーズ
であれば課税強化することと売れ行きは関係ない。

この切り返しは井上の頭の回転の早さをよく示している。

■<第一反駁~最終弁論>
否定側のデメリット補強がさらに深まる。
苦味度ランキングでビールと第3ビールの差が明確に異なっていること、酒税法に違反していないことは企業努力の賜物であることをeviを用いて示せたことは大きい。

一方、肯定側はビールの効用にターゲットを絞り反駁する。
商品自体をビールに似せようとしているのは明らかであり、それはビールと同じ効用を得られるためである。効用が同じであれば課税対象も同じである、というのは問題ないことを伝える。
またアルコール度数あたりの課税はウィスキーでありビールが高すぎないことも主張した。

効用が同じであれば同じ課税をかけるべきであるのか、と終始主張し続けた肯定側であったが、効用が同じであることやそもそもビールと第3ビールが同じカテゴリーに区分けできるという論拠が甘く、開発段階から目的が違うと主張する否定側に完全にブロックされた。

■<判定と総括>
果たしてビールと第3ビールは同じものであるのか。肯定側はこの観点にやや欠け、効用が同じであるという主張も言いっぱなしで終わってしまった感がある。
一方で否定側は国・企業・国民誰もがデメリットを受けてしまうというストーリーを明確にでき、多角的な観点やそれを伝える表現力も見事であった。
チーフディベートインストラクターから、BM史上ベスト3に入る好ゲームであったとの評価は、今年に入って波に乗り切れなかった中西の大きな成長を示す。
プレゼンのスペシャリストがその存在感を存分に魅せつけた試合であった。

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