講評

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論題

ディベートチャンピオンシップ2008-表戦
「日本は裁判員制度を廃止すべし」

2008年12月

廃止側 中村貴裕 
存続側 井上 晋
【試合結果】:廃止側勝利

【試合詳細フローシート】

■廃止側立論
<哲学>

「国民が対応できず日本に合わない制度は廃止すべし」とし以下の2点を基本理念とした。

・国民は人を裁けない
(人を裁くとは 真偽を見極め 法と照らし合わせて刑を決める)ということを基本理念とし、人を裁くのに必要なもの スキルと覚悟とした。

・国民にあわない
日本型民主主義とは 国民の自由を保障する自由主義
日本国民は自由をとり、政治や司法は 専門家にまかせた。

<存続のデメリットを3点>

1 真偽の追及ができない
  裁判がショーになる

2 公平でなくなる
  被告は裁判官を選べない

3 国民に負担を強いる
  8割が望んでない
  終わった後も守秘義務がある。現代版赤紙

■存続側立論
人を裁くというのは一種の権力であり正当性が必要

裁くとは、 事実を積み上げる&その裏にある想い

事実認定→誰にでもできる
その裏にある想いは裁判官だけではだめ

<反論>

負担は一生に一度あるかないかの程度。
可視化=わかりやすさ 一般の国民のためにやっている
有罪率 99.8% → 警察で裁判にかけるかどうかをきめている
司法でなく行政が決めている・・・三権分立でない

■存続側反駁
高い有罪率 →自白に基づくもの。人権が守られてない(1998年 国連人権規約)
警察・検察・司法が癒着している
クリーンにしよう → 国民のチェックが必要

裁判官によって異なる無罪率 → 専門家だけで機械的にながれている

多様な国民の目をいれてわかりやすくしよう

■廃止側反駁
高い有罪率 → 警察と検察がダブルチェック
必ず基礎になるものしか挙げてない
それだけ優秀 裁判の問題ではない

国民が司法参画する必然性ない
可視化が進んでいる
弁護士も裁判官になれる

国民にできるのか?
→ 事実認定・法解釈・量刑
対象が刑事裁判 → 難しい

公正性がない
→ 模擬裁判中に寝た これが国民の実態

■存続側最終弁論
事実認定 だれでもできる(プロの裁判官がいる)

その先にあるもの→多様な価値観
模擬裁判の結果がちがう → いいこと(ターンアラウンド
検察と裁判官がべったり (三権分立してなければならない)
事実を積み上げて国民の感情をしっかり生かしていこう

■廃止側最終弁論
多様な社会 → 分業体制が必要(日本にあう)
高すぎる有罪率 検察にチェック機能がある・癒着ではない
国民に対応できない →国民に資質がない 難しい 覚悟がない
裁判の質がさがる
以上の4点をのべてまとめた

■総評
廃止側(中村)は、日本国民の裁判に対する資質と、日本の風土において存続することの意義を問い、デメリット3点があがるとした。

先進国のなかで唯一導入されていないといわれている司法制度のなかで、とりわけ「日本」という国に裁判員制度が導入されることを、国民の資質・風土(戦後の政治や司法のありかたなどで)検証した点は評価できるが、その論証としては具体性を欠くものとなってしまった。

一方、存続側(井上)は、裁くことの意義そのものにフォーカスし、事実認定だけでなく、その裏にある想いは職業裁判官だけでのものではないとした。

この両者の哲学を対峙させ掘り下げていけばよかったが、反駁以降でかみ合ったのは、高い有罪率がなにに起因しているのかという点の応酬という、すこし中心からずれた議題になった。 廃止側(中村)は、最後まで自論の論証を丁寧にした。存続側(井上)は「可視化」や模擬裁判でさまざまな判決が出ることを逆手にとって持論の優位性に結びつける(ターンアラウンド)など、うまさも見られたが、廃止側の哲学を崩すまでには至らなかった。おたがい、相手との論を比較考量するという作業まではできてなかったが、そこは立論をきれいにまとめた廃止側が優勢に立ち、その土俵の中心で戦えなかった存続側という構図が残ってしまったというのがオーディエンスの評価につながったのであろう。

ただし、ジャッジ団は4名が存続側の勝利としている。これはやはり、廃止側があまりにも抽象的な論に終始したということ、存続側が唱えている、裁判員制度の効用(職業裁判官に一般人が加わること)への反論もなく、ただ国民の資質がないなどの持論の主張だけにおわったところはいただけない。これからの裁判員制度に対し存続側はある意味いろいろな投げかけをしており、それに答えなかった廃止側という試合になってしまった。

ただし、上記オーディエンスが受けた印象は廃止側のほうに分があり、トータルで廃止側が勝ちとなった表戦であった。

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