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2016.6.20(月)
ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第46斬 「イギリス国民投票 ブレグジット(BREXIT)」(2016年6月20日)

ディベートコーチ・オクヤマの「直言居士で失礼いたします」
第46斬 「イギリス国民投票 ブレグジット(BREXIT)」

イギリスがいま、欧州連合(EU)を離脱するかどうかの瀬戸際に立っています。
EU離脱の是非を問う国民投票が来週(2016/6/23)に実施される予定です。
このEU離脱問題は『ブレグジット(BREXIT)』と呼ばれています。
Britain(英国)とExit(退出する)を組み合わせた造語です。
イギリスの調査会社ICMとガーディアン紙が直近で行った世論調査によると、
離脱を支持する人が53%となり、残留支持派の47%を6ポイント上回ったそうです。
一方、Bloomberg社の記事によれば、世論調査の結果に関わらず、
大手ブックメーカー(賭け屋)の大半が、残留勝利の確率を60%以上とみているようです。
どちらに転ぶか分からない状況のなか、世界中の注目が集まっています。

■EU離脱派の主張
離脱派は「国としての主導権を回復する」という大義名分を掲げています。
具体的な主張は以下の2点
 ◆主張1 独立したい
 一言でいうとイギリスは独立志向が強い国です。
 英米法という欧州大陸とは異なる極めて民主的な法体系を持ち、
 通貨もユーロに統合せず、ポンドという従来の通貨制度を維持しています。
 イギリス人は自国の制度に対して、強い誇りを持っており、
 EUの必要性は理解しつつも、一定の距離をおいた関係を望んでいます。
 しかし、EUは国家統合を目指す仕組みですから、
 EU内で決められたルールは例外なく域内に適用しなくてはなりません。
 南欧諸国(スペイン、ポルトガル、イタリア、ギリシャなど)の債務問題から、
 イギリスは大きな財政負担を求められています。
 もともと親和性の低いEU加盟国を助けるための余分な費用負担は、
 イギリス国民のEUに対する不満を増長する形になっています。
 ◆主張2 移民・難民は来ないで欲しい
 「これ以上、移民・難民は受け入れられない」ということです。
 EU加盟国には難民受け入れを拒否できない、という法律があります。
 移民についても、特別な理由がない限り拒否できません。
 したがって、イギリスが移民・難民受け入れを拒否、あるいは制限するには、
 EUを離脱しなければなりません。
 離脱派によると、EU加盟国から毎年25万人の移民が流入しており、
 公的医療や教育など財政圧迫を引き起こしていると指摘しています。
 「移民流入=税負担増+失業リスク増大+治安悪化」という構図が、
 イギリス国民の世論形成に大きな影響を与えています。

■外交上手な国イギリス
もともとイギリスは外交上の立ち回りがうまい国として知られています。
イギリスは1975年にも、
EUの前進である欧州経済共同体(EEC)からの離脱をめぐって、
国民投票を実施しており、この際には、EEC側が妥協案を提示したこともあり、
残留が決まった経緯があります。
見方によっては、ブレグジットは、EU離脱をちらつかせた、
少々危険な交渉術とも言えます。
実際、イギリスのキャメロン首相は、今年2月にEU側と交渉を行っています。
 1)移民に対する福利厚生の制限
 2)金融システムへの規制強化の停止
EU側の一定の譲歩を引き出し、イギリス国民へのアピールに成功しています。
ディベートの歴史が深い国・イギリスの真骨頂というところでしょうか。

■日本への影響は?
日本の対イギリス直接投資額は1.7兆円にのぼり、アメリカに次ぐ世界2位です。
また、世界の金融センターという地位もあり、イギリスに進出する日本企業は、
約1,000社にのぼります。
もし、イギリスがEUを離脱することになれば、
日本経済やグローバル企業、金融市場への悪影響は避けられない見通し。
一方、イギリス外交に学ぶべき点は多くあります。
例えば、沖縄問題。
米軍による犯罪に対して、飲酒禁止・外出禁止など、
いわゆる”その場しのぎ”の対策までしか踏み込めない現状があります。
日米地位協定に定められた、日本に不利な取り決めが改善されない限り、
永久に米軍による犯罪がなくなることはないでしょう。
イギリスを見習い、『日米同盟破棄』をちらつかせて、
アメリカから「日米地位協定の見直し」という譲歩を引き出して欲しいものです。


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