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2016.12.4(日)
第42回 「『駆けつけ警護』という言葉」(2016年12月4日)

ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第42回

今年も流行語大賞が発表されました。
「神ってる」、「盛り土」、「PPAP」まで今年の世相を感じさせてくれる流行語が並びました。
そこで、今回は私がとても気になった(流行したではありませんが)言葉について書きたいと思います。
「駆けつけ警護」です。
そもそもの登場は、昨年9月19日に成立した新安保法制の設立に向けてメディアでも登場してきました。
そして今年その法律が施行され、南スーダンでのPKO活動からこの駆けつけ警護が新任務として加わることから、1年の歳月をへてメディアでも再度取り上げられるようになりました。
「駆けつけ警護」とは、朝日新聞11月16日の解説によると
「現地の国連司令部の要請などを受け、離れた場所で武装勢力に襲われた国連職員やNGO職員、他国軍の兵士らを助けに向かう任務。実施するかどうかは、自衛隊の派遣部隊長が要請内容を踏まえて判断する。警護対象を守る際には、武器を使う可能性もある。」
とのこと。
意味は分かりますが、私がこの言葉を初めて聞いた時から引っかかっているのが、
「駆けつけ」という言葉と「警護」という言葉のバランスの悪さです。
警護するためにわざわざ「駆けつける」とう言葉を足すということは、なんだか「駆けつけない」警護もあるのかと思いますが、武装勢力に襲われている味方を助けるために、ちんたらと歩いていく警護などあるはずがありません。
この「駆けつけ警護」の英訳は、「kaketsuke-keigo」だそうです。
そのことを菅官房長官が夕方の定例会見でこのことを指摘され、しどろもどろしたとか
http://www.j-cast.com/2016/11/28284620.html?p=all
日本語としても違和感があるし、英語に訳すこともできないのはなぜか。
それは、建前と実質が異なっているからです。
・憲法9条があるから日本は武力行為、戦闘行為は取れない
  ↓
・でも、海外でPKO活動をする限りはそうも言っていられない
  ↓
・戦っているのだけれども戦っていない雰囲気を出しながらも、
 一生懸命さが伝わる言葉で取り繕う
この極度に政治的な芸当は9条にまつわる日本の政治のなかで長く続けられてきたことですが、ここにきて限界が来ているのだと思います。
安全保障をどうするのかという問題は簡単に割り切れないことは理解しています。
しかし、問題だと思っているのは、
「日本人全体が、ぼんやりとした言葉をつかってごまかすことに慣れてきている。」ということです。
言葉は、人の思考そのものです。
その言葉を国家ぐるみで、ぼんやりといい加減にしてしまったら、国民全体の思考がぼんやりとしてしまいそうです。
「駆けつけ警護」この言葉に、まだまだ多くの日本人が違和感を感じてくれていることを願います。
スーッと違和感なく言葉としてとらえられているのであれば、とても危険な状態と思います。
皆さんはどう思いますか。

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