講評

講評

論題

BMサマースラム2004 -守- ディベートマニア予選第1試合
「論題:日本政府はイラクから、自衛隊を撤退すべし」

講評:奥山真

肯定側:ディベーターA
否定側:中西夏雄
【試合結果】:否定側勝利
ジャッジ総数13名
肯定側 38.26P(0票) 否定側 47.55P(13票)

■<概   略>
肯定側ディベーターAのオープニングスピーチは現状分析に大きく時間を取られ、メリットをきちんと打ち出せなかった。「イラクは戦闘状態にある為、自衛隊は撤退するべき」とする肯定側の哲学がメリットとうまく結びつかない。
対する否定側中西は、直接的な人的貢献が国際的な日本のプレゼンスを高め、また日米関係の発展につながると主張。争点の一つ「イラクの治安」の部分に対して、否定側は「安全面で配慮しているから大丈夫」と真正面から受け止められなかった点は非常に残念。反駁以降は新たな論理展開もみられず、まさにディベートが泣いた試合であった。

■<肯定側立論>
◇プラン1点
 ┗①自衛隊即時撤退

◇メリット3点
 ┣①コスト削減
 ┣②イラク人の期待を裏切らないで済む
 ┗③人命が救われる

「イラクが戦闘地域化し、イラク特措法の『非戦闘地域』という前提に抵触する」ということを言う為に、時間を取り過ぎた為、3つのメリットの論証不足に陥った。特に時間切れの為にメリット③の発生過程まで辿り付かないのは残念。メリット②についても「イラクと日本が友好関係にあった」と指摘するだけで、メリットの証明に至っていないと判断。唯一、メリット①として377億円のコストが非効率である点のみ立証された。

■<否定側尋問>
「人的貢献が必要」「肯定側プランでは人的貢献ができない」という否定側からの質問に対して、肯定側が同意した点が唯一の有効打。

■<否定側立論>
◇デメリット2点
 ┣①日米関係悪化による安全保障・経済分野での不利益
 ┗②人的貢献できない

国益を「日本の国際的プレゼンス向上」「日米関係の発展」と定義し、2点のデメリットと結びつけた立論。肯定側メリット①に対する反駁として、「日米関係維持」「人的貢献は必要」という二つの理由から、377億円については必要コストだと主張するも、自衛隊のイラク派遣が377億円以上の価値があるか、という点について基準が提示できず、反駁としては非常に弱かった。

■<肯定側尋問>
「イラクで自衛隊は何をしている⇒給水活動」が唯一、後の反駁につながる有効打。前回切れのある尋問を行ったディベーターAだが、質・量ともに不調。

■<否定第一反駁~肯定第一反駁>
否定側第一反駁は、否定側にとっては、強力なネガティブブロックを完成する為の非常に重要なパートであるが、肯定側で残っている主張「377億円のコスト」「イラク特措法許される非戦闘地域という前提崩壊」に対して有効な反論はなかった。
肯定側主張に対して「安全面に配慮しているから自衛隊は安全」と逃げたのは非常に残念。対する肯定側だが、デメリット二点に対する反論、メリットの防御をする為に、質の良いコンパクトな反論をしなければならなかったが、直接関係ない議論(イラクはアンクルサン社会で血縁関係が重視される)で時間を潰し、否定側に有効に反駁できなかった。

■<否定最終弁論~肯定最終弁論>
最終弁論は互いに、主張を繰り替えす単調な展開に終始。

■<判定と総括>
完全な肯定側の自滅の為、否定側の勝利。

時間切れでメリットの論証ができない点は、肯定側おおいに反省・改善をする必要がある。
また、肯定・否定側ともに反駁~最終弁論の中身を濃くする為には、「多角的な分析」が不可欠である点に留意してもらいたい。「切り口の少ないディベート」は得てして「ディベートが泣く」主因の一つになるからである。

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