講評

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論題

BMサマースラム2004 -守- ディベートマニア予選第2試合
「日本政府はイラクから、自衛隊を撤退すべし」

講評:高澤拓志

肯定側:井上晋
否定側:中村雅芳
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数13名
肯定側 57.25P(9票) 否定側 52.73P(4票)

■総論
肯定側は、イラクの自衛隊派遣に関する法的根拠、それによる自衛隊の発揮できる能力を軸に無難に論を展開。
一方の否定側は、日米関係の悪化に終始し、議論の広がりがなかったうえ、肯定側への有効的な反駁がなかった。ただし、注目すべきは 肯定側の哲学に基づいた議論がほとんどないことである。主体的な外交をする意義は何なのか?そこから発生するメリットは何なのか?誰が享受するメリットなのか?ここを、否定側はついていくべきであった。

双方の反対尋問を中心としたプレゼンテーションがすばらしく、見ていて楽しい(インタラクティブな)ディベートを両者が見せてくれた。

■肯定側立論

◇哲学 日本の主体的な外交の確立

◇現状分析  アメリカに追従しているだけ
しかし、武力をもてない現状ではなにもできない
◇プラン
①イラクからの撤退
②国連にイラク問題を委譲する
→これによりアメリカから距離を置く

◇メリット 以下の3点の問題が解決
①法的問題 (不明確な非戦闘地域)
 日本国憲法9条とイラク特措法の問題
  377億円のコストをかけていくべきでない
②自衛隊は(今の憲法では)なにもできない組織である
③イラク国民から悪感情を抱かれ、友好関係に悪影響

議論されていることは、論題の中心をはずしていない。特に、自衛隊派遣に関する法律問題にスポットをあて、その有効性を問うている点は評価できる。ただ先に述べたとおり、哲学という柱があとの議論につながってない。「日本の主体性」を拠ってたつところにしたのに、どこへいってしまったのか?しかし、流れるような喋りのうまさと視線の使い方はさすがである。

■否定側立論
◇哲学 イラクからの撤退は、日本の国益を損なう
日本の国益
①日本の安全保障②日本経済の安定

◇デメリット
①日米関係の悪化
(1) 安全面 ・・・対北朝鮮政策の悪化
(2) 経済面 ・・・日本の輸出の25%は米国
<深刻性>・・・ 在日米兵との関係悪化
② 米国以外の国との関係の悪化
(1) 中東との関係悪化による原油取引の減少
(2) 日本撤退によりイラクでの他国の負担が増える
メリットへの攻撃は、3点すべてに言及はしていたがすべて抽象的。たとえば ①非戦闘地域の件は現状ではわからない③ 6月のイラクへの政権移譲で感情は移っていくだろうなど

■否定側反駁・最終弁論
日米関係の重要性につき、安全保障面と、北朝鮮問題について言及
→特に北朝鮮問題について、核問題と拉致問題はアメリカの支援なしには解決できない
とにかく今は米国から離れてはいけない。それが、イラクにいる自衛隊だけではなく、日本国民全体に安全保障につながる

■肯定側反駁・最終弁論
人道支援は必要・・・しかし実際には何もしていない
            武力がないから自衛隊として機能できない
             給水をやっているというが、浄水場がありそれでまかなえる

日米同盟について・・・世界はアメリカだけではない
              国連に委譲して解決していくべき

日米同盟が解消されて、どれくらいのダメージがあるのか?立証されてない。

■最終判定

総論でも書いたが、否定側は、米国との関係悪化の議論に終始してしまった。
それ以外の議論をすべきだった(立論からの展開)。
憲法の解釈の仕方(集団的自衛権)の議論をすべきだった(肯定への反駁として)。

以上より、肯定側 井上晋が勝利!!

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