講評

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論題

BMニューディベートフロンティア2005 タッグ巴戦 第3試合
「日本政府はデノミネーションを実施すべし」

講評:中西夏雄

肯定側:久保田浩・中村貴裕 
否定側:本間賢一・中村雅芳
【試合結果】:肯定側勝利
ジャッジ総数10名
肯定側8票(53.54P) 否定側2票(47.75P)

■<概   略>
肯定・否定とも直前編成の即席チームだが、両チームともよくまとめ上げてきた。肯定側のデノミが円のアジアの基軸通貨化、景気効果、威信アップ寄与するという論に対し、否定側は、円の基軸通貨化の必要性、景気効果よりもコスト大、威信アップの重要性に疑問を呈す展開。しかし、否定側は、論が進むにつれ、デノミが円の基軸通貨化に寄与するのかしないのかではなく、円が基軸通貨化、国際通貨化にふさわしいかふさわしくないかに論がズレていってしまい、修正することができなかった事が敗因を生んでしまった。

■<肯定側立論>
◇哲学・理念 デノミネーションによる円のアジアにおける基軸通貨化
◇プラン4点
 ┣①1/100デノミ実施、銭・厘発行
 ┣②国民への周知
 ┣③新旧両単位の価格表示義務付け
 ┗④新札発行
◇メリット3点
 ┣①円のアジアにおける基軸通貨化の第一歩
 ┣②景気効果
 ┗③円の威信アップ

まずアジアにおける国際通貨の必要性を、アジアの経済力またその中で占める日本の経済力と絡めて紐解き、そのためには、現在の国際通貨であるドル、ユーロと同レベルの使い易さが必要だとして、通貨単位を揃えるデノミを訴えていく。そしてそれが、3つの側面すなわち、国、企業、個人にとって重要だということを説いていく。
また景気効果、威信アップについては、シンクタンクの試算、アジア圏の通貨でドルに対して3ケタという通貨がほとんどないことから、体裁をよくしようというもの。

■<否定側立論>
◇哲学・理念 企業国民に混乱と負担を招くデノミネーションは実施すべきでない
◇デメリット2点
 ┣①コスト甚大
 ┣②円の使い勝手悪くなる 1単位から3単位になるため
 ┗③社会的混乱を招く

D①は、需要=コストであり税金・民間負担でまかなわれる、IT投資が必要な企業にとって厳しい
D②は、円のみの単位から銭・厘の新しい単位が生まれることで、計算が困難、対応するためにIT投資負担も大きい
D③は、会計上の混乱、詐欺の可能性を述べ、国民への事前周知も「振り込め詐欺」を引合いに焼け石に水とそれぞれ発生過程を述べた。
しかし、D①は2次的経済効果が潰しきれないが、M①と相殺されると、D②③のインパクトが重要になってくるが、2000年問題と絡めても十分伝わってこない。

■<否定第一反駁~肯定第一反駁>
否定側はメリット攻撃の補強として、M①の円の国際化が、他条件整備がされない限り無理との論を展開する。しかし、肯定側はアジアの基軸通貨化への第一歩としており、ここで幾分噛み合わなくなってくる。またM②③については、基本的に立論の繰り返しに近く、特に目新しい側面は見えてこない。逆にデメリット補強が出来なかったのは痛い。
肯定側は、デメリット攻撃、メリット補強と構成がしっかりしており、D①については2次効果であるGDPアップで、コスト負担した側にもメリットが出てくること、D②については便宜上、現在も使っており影響は少ないこと、D③は仏の実施時に特に混乱なかった事を挙げ、半年以上のPRで問題ないことを強調し、全てに反駁できた。

■<否定最終弁論~肯定最終弁論>
否定側はようやくデノミと円の国際化の関係に突いていくが、いまひとつ厚みに欠ける。また景気効果に対しても若干返していくものの、インパクトが十分伝わってこない。
肯定側は否定側が最後までこだわった、コスト負担によるIT投資が滞ることについて、新札発行時の例を出し、実際にはシステム投資は滞らないとして、完全に否定側デメリットを潰す形をとった。

■<判定と総括>
冒頭にも書いたとおり、デノミネーションが円のアジア基軸通貨化に貢献するかしないかではなく、円が国際通貨にふさわしいかふさわしくないかに争点がずれてしまった事が否定側の敗因といえよう。また今回はメリットとデメリットが表裏一体となっている「気効果と影響」について、きちんとインパクトを伝えきれたかがポイントであった。
その点、肯定側がコスト(種)を認めつつも、それが大きな収穫を生むことを伝えられたのに対し、否定側はその種が明日の食にも等しく、それがなければ、収穫まで生き延びられないことを伝えきれなかったところに、勝負の分かれ目があった。

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