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2018.1.26(金)
第56回 「芸能スキャンダル報道は必要か?」(2018年1月26日)

ほぼ月イチコラム
時事問題がわかる BURNING MIND主席講師・井上晋の『賛否両論のための基礎知識』 第56回

小室哲哉さんが突然の引退を発表しました。
理由は、週刊誌の不倫疑惑報道にはじまった一連の騒動に自分なりのけじめをつけるためとのことでした。
中学生の頃、TM NETWORKの「Get Wild」を何度も何度も聞き、globeの「DEPARTURES」は、冬のゲレンデではいつも流れていました。青春のど真ん中を彩ってくれたアーティストの引退は悲しいものです。

さて、今回の引退発表の後、テレビなどのメディアやネット上では、盛んな議論がなされていますが、これまでのスキャンダルと違うところは「週刊誌がやりすぎ」とか「そもそも芸能人のスキャンダルとか追いかけなくてよい」とか「いやいや、求めている読者がいるから販売されるんだ」などなど、これまでにない意見が出てきています。

それほど、1時間半に及んだ小室哲哉さんの会見がインパクトがあり、介護疲れを感じている世間の方々の共感も読んだのだと思われます。

今回、あえてこのテーマに本コラムでも切り込んでみたいと思います。

テーマは、「芸能スキャンダル報道は必要か?」というものです。

不要という論は、
「芸能人は、「芸」を評価される人であり、その周辺となる私生活や人間性は騒ぎ立てるようなものではない。」といったところでしょうか。
彼らが身に着けたスペシャルな能力によって、我々は素敵な音楽を聴くことができるわけですから、それ以外のところは公共で扱う必要は無いというものです。
今回、週刊誌やメディアに対して逆風が吹いているのは、まさにこの考え方によるものです。

一方で、週刊誌は営利団体ですから、ニーズの無い情報は追いかけたり掲載したりはしません。つまり、ニーズがあるから情報が提供されるのです。

では、このニーズはどこから来るのでしょうか。

心理学の用語に「シャーデンフロイデ」というのものがります。
自分が手を下すことなく他者が不幸、悲しみ、苦しみ、失敗に見舞われたと見聞きしたときに生じる、喜び、嬉しさといった感情のことです。
日本語では、「ざまーみろ」とか「他人の不幸は蜜の味」というものです。
この感情は、社会的比較によって生じるという研究があります。
つまり、自分と他者の社会的優劣による比較の結果、劣勢の部分を埋めようという感情です。ニーチェは、このことを「平等性の勝利と回復についてのもっとも卑怯な表現」と言ったそうですが、人間そんなにできたものではありません。

スキャンダルがこれだけもてはやされる背景には、「社会的な格差」や「自分に対する自信の無さ」、「自分の中での価値観のぐらつき」があり、その心のアンバランスを埋めるために、「シャーデンフロイデ」にたよっているところがあるのではないでしょうか。

週刊誌の記者の問題でもなく、メディアの問題でもなく、「なんか満たされていない」と感じている人の心理の表出だと私は思います。

つまり、格差や価値観の多用化にバランスを失ってしまいそうな社会(個人)を少しだけ救う頓服薬として、今の日本にはスキャンダル報道は必要なのだと感じています。

最後に、シャーデンフロイデが生じる条件の一つとして、「他者の不幸が深刻でない」ことがあげられています。
つまり、人の死とかあまりにも深刻な不幸については、人はそこまで冷淡になれないということです。
当たり前のようですが、人間はちゃんとした調整弁を持っているのです。今回の小室さんのケースは、「深刻な不幸」ととらえられてことによるものでしょうから、この調整弁が機能していることになりますね。

皆さんはどう思いますか。

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